クライミンググレードの難易度(レベル)比較|悩んだら読む基本から学ぶ記事

twall (9) ボルダリング知識あれこれ

クライミングを始めたばかりの方にとって、「グレード」という言葉は少し難しく感じられるかもしれません。ジムの壁や外岩のルートにはそれぞれ数値や記号が記されており、それが「クライミンググレード」と呼ばれるものです。

これは登攀の難易度を示す指標であり、自分のレベルを把握したり、次に挑戦すべき課題を選んだりするために重要な役割を果たします。この記事では、クライミンググレードの基本から、日本と海外の違い、自分の実力をどう評価すべきか、そしてグレードアップを目指すためのヒントまで、初心者にもわかりやすく解説していきます。

クライミング(ボルダリング)グレードとは何か?初心者にもわかる基礎知識

クライミングを始めると、ジムや外岩で「〇級」「〇段」「5.10」など、さまざまな数字や記号が書かれているのを目にします。

これはすべて「グレード」と呼ばれるもので、ルートの難易度を示しています。クライマー同士での共通言語であり、自分の成長度合いや挑戦レベルを確認する大切な指標でもあります。

クライミングの魅力は、老若男女問わず同じ壁を登れる点にあります。しかしそのためには、それぞれの技術や体力に見合った課題に挑む必要があり、グレードはその指標となります。初心者でも正しく理解することで、無理なく楽しく上達していくことが可能です。

クライミンググレードの定義と役割

グレードとは、登るルートや課題の難しさを数値や記号で示した評価基準のことです。ジムであれば課題ごとに「6級」「5級」「3級」などと記されており、それぞれに難易度の差があります。

その役割は主に以下の3つです。

  • 自分のレベルに合ったルートを選ぶための指標
  • 成長や成果を客観的に確認するための目安
  • 他のクライマーと共通認識を持つための基準

例えば、自分が「4級」を安定して登れるようになったという事実は、技術の向上を実感する手がかりになります。これがなければ、登れた課題が簡単だったのか難しかったのかを判断できません。

なぜグレードが存在するのか?目的と意味

クライミングにおけるグレーディングの目的は、単なる競争ではなく、自分自身の成長と挑戦を可視化することにあります。数字による目安があることで、同じ壁に向かっても目的意識を持つことができます。

また、クライミングには怪我のリスクもあるため、自分の実力を過信して難易度の高い課題に挑むと危険が伴います。正確なグレード設定があることで、安全性の確保にもつながります。

そのため、グレードは単に「登れた・登れない」の結果だけでなく、継続的に取り組むべき目標を設定する意味も持っているのです。

ジムと外岩でのグレードの違い

多くのクライマーが最初に接するのはクライミングジムの人工壁ですが、外岩(自然の岩場)でも同様にグレードがあります。ただし、この二つには明確な違いがあります。

  • ジム:人工的に設計された課題で、グレードの一貫性が比較的高い
  • 外岩:自然物であるため形状や環境条件により主観的な要素が強く、グレードにはばらつきがある

ジムでの「4級」が外岩でも同様の難しさとは限りません。特に外岩では天候や岩の摩耗、個々の得意不得意によって体感難易度が変動しやすいため、ジムとの比較はあくまで参考程度にとどめましょう。

ルートごとの難易度をどう評価するか

課題のグレードを決める際には、開拓者(最初にその課題を作った人)が基準となる難易度を設定します。その後、他のクライマーが登ってみて「妥当かどうか」を判断し、フィードバックが集まって最終的なグレードが定着します。

評価に使われる要素としては以下のようなものがあります:

  • 保持するホールドの小ささや悪さ
  • ムーブの複雑さやテクニカル要素
  • 持久力の要求度
  • 体格による有利・不利

つまり、グレードは純粋な難易度のほかに「登りやすさ」「危険度」「ムーブの独自性」などを総合的に見て判断されるのです。

クライミング初心者が最初に意識すべきグレード

初心者の場合、まずは「6級〜4級」を目安に始めるのが一般的です。ジムによっては「初心者マーク」や「体験課題」として設定された低難易度のルートがあるため、そういった課題から挑戦しましょう。

最初は登れなくても気にする必要はありません。むしろ、登れない課題にどう向き合うかが成長の鍵です。無理なく楽しめる範囲で、少しずつグレードを上げていくことが継続のコツとなります。

また、登れた課題のグレードを記録しておくと、あとで自分の成長が確認できます。ジムのアプリやクライマー向けSNSなどで記録を残しておくのもおすすめです。

クライミングの魅力は、自分の限界に挑戦し続けるプロセスにあります。グレードはその旅路のガイド役として、初心者にもベテランにも欠かせない存在です。

グレードの種類と比較:日本と海外での違い

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日本でクライミングを始めると、ジムや大会、外岩などでさまざまな「グレーディングシステム」に出会うことになります。中でも特徴的なのが、日本独自の「級・段」表記と、国際的に使われる「Vグレード」や「Fontグレード」、そしてロープクライミングで使われる「5.10」などの表記です。
これらのグレードはそれぞれの文化や歴史の中で発展してきたもので、同じ「難しさ」を示すにも微妙にニュアンスが異なります。

日本で使われるグレードの種類(ボルダー/リード)

日本のクライミングジムや外岩では、主に2つのスタイルに応じて異なるグレード表記が使用されます。
スタイル 主なグレード表記 内容
ボルダリング 6級〜1級、初段〜三段など 手軽に始めやすく、短い課題に設定される。数字が小さいほど難しい。
リードクライミング(ルート) 5.7〜5.15(YDS方式) 高さのあるルートをロープで登る。数字が大きいほど難易度が高い。
特にボルダリングでは、「級」から始まり、より高難度になると「段」に進みます。初段がもっとも基本的な段であり、それより上に二段、三段と続いていきます。

海外の代表的なグレーディングシステム

海外ではまた異なる表記が主流です。例えば、アメリカやヨーロッパには以下のようなグレーディングがあります:
地域 システム 特徴
アメリカ Vグレード(V0〜V17) ボルダリング向け。V0が最も易しく、数字が上がるごとに難しくなる。
フランス Fontグレード(4a〜8c+) 細かい難易度設定で評価。a, b, cの順に難易度が上昇し、+でさらに上がる。
アメリカ(リード) YDS(5.7〜5.15d) 高度のあるロープルート向け。数字の後の小文字が細かい難度差を表す。
これらのグレードは国によって採用率や文化的背景が異なるため、どの方式が「正しい」ということはありません。あくまでも、それぞれのクライマーコミュニティにおいて機能しているのがポイントです。

同じルートでも評価が異なる理由

同じルートを複数の人が登ったとしても、グレードの感じ方にはバラつきがあります。これはグレーディングの本質が「主観評価」に基づいているためです。ルート開拓者が最初に設定し、それに対して複数のクライマーが「このくらいの難しさだろう」と意見を交わすことで、徐々にグレードが落ち着いていきます。
しかし、人それぞれに得意なムーブや体格、経験値があるため、「登りやすく感じた」「思ったより難しかった」という意見が分かれることは少なくありません。
特に以下のようなケースで差異が生まれやすいです:
要因 具体例
体格 リーチが長いとホールドが届きやすくなる
経験 同じムーブでも慣れている人ほど楽にこなせる
ジムの方針 登れる人が多いと判断されると「甘め」に設定される
そのため、グレードはあくまで「目安」であり、絶対的な指標ではありません。異なるジムや外岩での経験を重ねて、自分自身の感覚と向き合っていくことが大切です。
また、海外に遠征に行く際は、現地で使われているグレーディングシステムを理解しておくとスムーズです。日本で「2級」を登っている人がアメリカの「V4」に挑戦する、あるいはフランスの「6b+」に取り組むといったことが可能ですが、その際に自分の実力と対応するグレードを知っておくことが安心につながります。
結論として、日本と海外では用いる言語や尺度こそ異なりますが、共通しているのは「登る人にとって挑戦しがいのある基準を持つこと」。国を超えてクライミングの魅力が広がっていく中で、各国のグレードを理解し、柔軟に対応できる知識を持つことが現代のクライマーには求められています。

自分のグレードをどう判断するか?目安と自己評価法

クライミングを続けていくと、「自分はいま何級くらい?」という疑問が自然と湧いてきます。特にジムで課題をクリアするたびに、その難易度と自分の力量との関係が気になってくるでしょう。
ここでは、自己評価の目安や、周囲との比較ではなく「正しく自分の現在地を知る」ための考え方を整理していきます。

自己申告とジムスタッフの判断の違い

多くのクライマーが、自分のグレードを「登れた課題の最高グレード」で測ろうとします。しかしこれは一つの目安であって、安定してそのグレードを登れているか、という点がより重要です。たまたま登れた1本だけで判断すると、実力以上に評価してしまう可能性があります。
ジムでは、スタッフや常連のクライマーが「今の感じだと3級前後ですね」とアドバイスをくれることがあります。これは多くの課題を見てきた立場からの経験則に基づいています。一方で自己申告は主観的になりやすく、評価が甘くなることもしばしばです。
自分のグレードをより客観的に把握するためには、「どのグレードを安定して登れるか」を基準にするのが有効です。1〜2回登れたグレードと、10本中8本登れるグレードでは、意味合いがまったく異なります。

初級〜上級のざっくりしたグレード基準

日本のボルダリングにおけるざっくりしたグレード感は、以下のように区分されることが多いです(ジムによって多少の差はあります)。
初心者レベル
6級〜5級。基本的なムーブやバランスを身につける時期。通い始めて1〜3ヶ月程度。
初中級者レベル
4級〜3級。足の使い方、重心移動、保持力のバランスが求められる。半年〜1年ほど。
中級者レベル
2級〜1級。ホールドの持ち方やムーブ選択に多様性が出てくる。登れるルートと登れないルートの差も大きくなる。
上級者レベル
初段以上。パワー、テクニック、メンタルが高水準で求められ、ムーブの精度や持久力も問われる。
これらはあくまで目安ですが、自分の課題選びや成長の判断材料として活用できます。特に「次に何を目指すか」を明確にしたいとき、このようなステップは有効です。

「このグレードを登れたら〇級」の目安一覧

以下は、登れた課題本数とそのグレードに基づいた、おおよその自己評価の目安です。1〜2本登れただけでは実力といえませんが、一定の再現性があるかどうかが重要な判断軸になります。
達成度 目安とするグレード 補足
初めて完登できた 1〜2段階下のグレードが実力 フラッシュ(初見登攀)で登れるならそのグレードに近い
2回以内に再登できる そのグレードが「実力上限」 コンスタントに登れるようになれば次の段階へ
10本中8本以上登れる そのグレードが「安定グレード」 周囲にアピールしても恥ずかしくない目安
また、SNSやクライマー向けアプリなどでは「自分の得意傾向」も分析される機能があり、登れる課題がスラブ中心か、被り壁中心かによっても見方が変わります。
特定のグレードばかりに固執するよりも、多様なタイプの課題を経験することが、本質的な実力向上につながります。
まとめると、自分のグレードは「一発登れたかどうか」ではなく、そのグレードを安定して、再現性をもって登れるかを基準に考えるべきです。ジムごとの傾向や外岩との違いも考慮しつつ、無理なく自分のペースでステップアップしていく姿勢が、何よりも重要なのです。

グレードアップのための練習法と考え方

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クライミングにおいて、自分のグレードを一段階でも引き上げることは、大きな達成感とモチベーションの源となります。しかし「ただ登るだけ」では、ある段階で伸び悩みが訪れることも少なくありません。
ここではグレードアップを目指す上で必要な練習法と、長期的に伸び続けるための考え方について整理していきます。

グレード別に変えるべきトレーニング内容

トレーニング方法は、現時点でのグレードによって変える必要があります。身体能力に偏った練習や、ムーブだけに特化した反復では偏りが生じ、バランスの取れた上達にはつながりません。

6級〜4級:フォームの確認、足の置き方、体重移動の感覚を養う。柔軟性やバランス感覚を重視した課題に多く取り組む。
3級〜2級:保持力や引きつけ動作を強化するトレーニングを取り入れ始める。スローパーやピンチ系の保持練習を少しずつ加える。
1級以上:複雑なムーブ(ダイノ・デッドポイント・トウフック等)を分析・再現できるようにする。持久力と瞬発力の両立が求められる。

特に1級を超えてくるあたりからは「ムーブの理解度」や「壁の読み解き力」も必要になってきます。ただの力任せでは太刀打ちできず、効率よく登る感覚を磨く段階に入るのです。

メンタル面とフィジカル面の両立

多くのクライマーが意外と見落としがちなのがメンタル面の重要性です。どれだけフィジカルが強くても、「登れる気がしない」「落ちたら怖い」という意識があると、パフォーマンスは著しく低下します。
特に難しいグレードに挑戦するときは、最初から完登を狙わず、分割して攻略する姿勢が有効です。「この一手だけ決める」「最終面まで行ってみる」など、部分的な成功体験を積むことで、自己効力感が高まり、挑戦に対する心理的抵抗が減っていきます。

メンタルの鍛え方の例:
・失敗した後の再チャレンジ回数を意識的に増やす
・得意な課題と苦手な課題を交互に行う
・自分の登攀動画を見返し、ポジティブな要素を見つける

一方フィジカル面では、クライミングに特化したトレーニングが有効です。ジムでの課題に加え、ボルダリング専用のトレーニング(キャンパシング、デッドハング、ヒールレイズなど)も段階的に取り入れていきましょう。

継続的に伸ばす人の共通点

長期間にわたってグレードを上げ続けている人には、ある共通点があります。それは課題を「消費」ではなく「研究」しているという姿勢です。

グレードが伸びる人の思考法:
・一撃できなかった課題を記録し、後日再挑戦する
・自分と体格が近い人の登り方を観察・模倣する
・完登できなかった理由を「感覚」ではなく「論理」で分析する

このような人は、登れなかったことを単なる敗北と捉えず、次に生かす材料として活用します。その結果、登攀の精度が増し、フィードバックループが強化され、より効率的な成長が可能となるのです。
また、トレーニングの周期管理も重要です。常に全力で取り組むのではなく、強度を上げる週・軽めにする週を交互に設定することで、身体の回復とパフォーマンスの安定が得られます。いわゆる「ピーキング」を意識することで、コンペや遠征にもベストな状態で臨むことができます。
最終的に、グレードアップとは「技術・筋力・思考・心」のすべてを磨き続ける過程です。今すぐに成果が出なくても、地道に積み重ねていけば、やがてそれは結果となって表れます。焦らず、確実に、そして柔軟に取り組んでいきましょう。

よくある疑問とトラブル:グレードに関するQ&A

クライミングを続けていく中で、多くの人がぶつかるのが「グレード」にまつわる悩みや疑問です。「なんでこんなに難しく感じるの?」「他の人より登れない…」といったモヤモヤは、楽しさと同時に付きまとうものでもあります。

ここでは、初心者から中級者までがよく抱くグレードに関する疑問とその対処法をQ&A形式でまとめていきます。

「このグレード、本当に合ってる?」という疑問

Q. 登った課題のグレードが「自分の実力」と思えないのですが?

グレードとはあくまでも「目安」であり、すべての人に平等に感じられるわけではありません。登れた課題がたまたま自分の得意ムーブだった、ということもありますし、その逆に不得意な課題にあたってしまった可能性もあります。

一つの課題やグレードに固執せず、複数の課題で判断することが大切です。もし1級を登れたとしても、それが再現できないようであれば「実力の上限」と捉え、継続的にそのレベルの課題をこなせるかどうかを目安にしましょう。

ジム間でグレード感が違いすぎる理由

Q. Aジムの3級は登れるのに、Bジムでは全然登れません…なぜ?

これは非常によくある悩みです。ジムごとの傾向やルートセッターの意図によって、同じ「3級」でも難しさがまったく異なることがあります。

例えば、あるジムは初心者に優しい「甘め設定」でグレードを決めている一方、別のジムはチャレンジ精神を煽る「辛め設定」を採用していることも。ルートセッターの考え方、ムーブのバリエーション、壁の傾斜など、物理的・文化的な要因が複合的に絡んでいるのです。

対処法としては、自分が「どのタイプの壁で、どのような課題が得意なのか」を見極めること。違いを楽しむという姿勢も、上達には欠かせない要素です。

周囲のグレードと比べて落ち込むときの対処法

Q. 友達の方が上達していて、自分だけ成長していない気がします…

クライミングは非常に個人的なスポーツです。競争ではなく、自己成長が最大のテーマであり、他人と比較しても自分の成長スピードが変わるわけではありません。

とはいえ、身近な仲間が急激にグレードを上げていくと、焦ったり落ち込んだりする気持ちは自然です。そんなときは、自分が数ヶ月前に登れなかった課題が登れるようになっているかを振り返ってみましょう。過去の自分と今の自分を比べることで、着実な成長が見えてくるはずです。

また、上達には「飛び級タイプ」と「積み重ねタイプ」があります。後者は時間がかかりますが、土台がしっかりしているため、長期的に見て安定した実力につながります。

最後に、グレードに対して過剰に一喜一憂しないことが大切です。あくまで登ることを楽しみ、課題に向き合う過程にこそ本質があります。

上手くいかない時期も、遠回りに思える課題も、すべてが自分を強くする「経験値」になると考えて、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。

まとめ

クライミンググレードは、クライマーの成長を可視化し、次なる挑戦を導いてくれる重要な指標です。ジムと外岩、国内と海外、それぞれで異なる基準があるため混乱しがちですが、自分の現在地を正しく把握するためにも基本を押さえておくことが大切です。

周囲との比較に振り回されるのではなく、自分自身のペースで一歩ずつステップアップしていくことが、クライミングを長く楽しむ秘訣です。ぜひこの記事の内容を参考に、グレードとの向き合い方を見直してみてください。